#The Economistをサクッと読む

英エコノミスト(The Economist)の最新記事を日本語で紹介しつつ、日々の気づきを徒然につづります

アフターコロナの出張はつらいよ

f:id:Simple333:20200505163359j:plain

5月に入り、世界各国でロックダウンの緩和とともに経済活動が再開しつつあります。でも最新号のThe Economistはアフターコロナの世界を「The 90% Economy(90%経済)」と呼んで、ワクチンと治療薬が普及するまでは以前の「通常」に戻ることはないと予測しています。例えば海外出張。パロディ風に描いてはいますが、実はあるある、なんじゃないでしょうか。


 (原題)

Imagine the post-pandemic misery of business travel
The public announcements could be worrying, at the least

 

(和訳)

パンデミック後の出張はつらいよ:各種アナウンスだけでも気が滅入る

新型コロナウィルス感染症の経済的影響の広がりを食い止めるため、各国政府がビジネスの再開に動いている。一部の企業も、顧客を求めて営業活動の再開に踏み切るだろう。しかし、ワクチンができるまで少なくともあと1年はかかりそうな状況で、ビジネスパーソンにとって次の出張はガマン大会になるかもしれない。行く先々で耳に届く各種アナウンスはきっと次のようになるだろう。


ピンポンパンポン。皆様、ヒースロー第5ウェイステーションへようこそ。今般「ターミナル」という言葉がお客様に不快感を与える可能性を懸念し、空港名は変更されております。手荷物をお持ちのお客様は、消毒のため預け入れをお願いいたします。本革のスーツケースにはシミが残ることがございますが、目的地に到着後、新しいものをお買い求めいただくよいきっかけになるかと存じますので予めご了承ください。チェックイン終了後はまっすぐ、検体採取と体温検査を含むセキュリティ検査へお進みください。お客様同士の間隔を2メートル以上空けていただくため、現在、検査待ちの列が大変混雑しております。セキュリティ検査の通過後は、どうぞ免税店でのお買い物をお楽しみください。手指消毒剤を豊富に取り揃えております。お食事がお済みでない方には申し訳ございませんが、飲食店舗はすべて休業しております。それでは安全な旅となりますように。ピンポンパンポン。


こちらはアクメ航空107便ニューヨーク行きでございます。私は機長のリチャーズです。社会的距離ルールを遵守し、当機に副操縦士は搭乗しておりません。コックピットに複数の人が座れるスペースがないためです。私はコーヒーのボトルを持参しておりますし、これまでフライト中に居眠りしたことはございませんのでどうぞご安心ください。私より30分ごとに最新情報をお伝えいたしますが、途切れた場合は客室乗務員がコックピットのドアを叩くことになっております。通常のお食事やお飲み物のサービスはできませんが、ペットボトル入りのお水と袋入りのナッツやチップスをお楽しみください。お隣の席も空席とさせていただいております。ただし、窓際の席をお選びになられたお客様はご注意ください。お客様にも社会的距離のルールを遵守していただく必要があるため、通路側のお客様がお休みの場合は、そのお客様をまたいで通路へ出ることはできません。また、トイレの列にお並びいただけるのは常に3人までです。水分の摂取量にご留意ください。何かご入用の際は客室乗務員が参りますが、防護服着用のためしばらくお待ちくださるようお願いいたします。


皆様、当機はJFK空港に到着いたしました。良いお知らせと悪いお知らせがございます。良いお知らせは、空港内の到着人数が通常より少ないことです。悪いお知らせは、電子パスポートリーダーを毎回消毒しなければならないため、入国審査にはやはり2時間待ちが予想されることです。なお、待合所での携帯電話での通話はできません。自由の国アメリカへようこそ。お気をつけてお過ごしください。


この度はパーガトリー・ホテルをご利用いただきまして誠にありがとうございます。当ホテルへのチェックインはいつでも可能ですが、お客様が咳をしている場合はホテル外へは決して出られないことになっております。消毒済みのルームキーを消毒済みの封筒にご用意しております。エレベーターには一度に一人ずつお乗りいただきますので、お部屋にお入りいただけるまで1時間ほどかかります。朝も同様の状況となりますので、会議に向かわれる場合は早めのモーニングコール設定をお勧めいたします。お手荷物が多い場合でも申し訳ございませんが、ポーターはおりません。ホテルスタッフの感染リスクを減らすために、ご滞在中のお部屋のお掃除はございませんので、ご自身でベッドメーキングをお願いいたします。シャンプー等のアメニティは別のお客様と共有できませんので、ご自由にお持ち帰りください。ホテル内のスパ、プール、バーは休業しております。ルームサービスもご提供しておりません。それではご滞在をお楽しみください。


皆様、2020年リスクマネジャー会議へようこそ。この会議名は「リスクテイカー会議」のほうが良かったかもしれませんね。冗談です。この会場は完全に消毒されていますのでご安心ください。今年の大会スローガンは「あなたの雇用主がやらないなら我々があなたの健康を守る」です。ご質問のある場合はできるだけ大きな声でお願いします。マイクは回しません。パネルセッションは、ステージの両端に2名のパネリストを配置する形とさせていただきます。残念ながら昼食はビュッフェをご用意できませんので、会議場の外にある屋台をご利用ください。どの屋台を選ぶかで、あなたが本物のリスク管理者かそうでないかが試されます。会場には展示ブースもあり、皆様の来場をお待ちしていますが、ブース担当者は安全な距離を保ち、マスクを着用させていただきます。最後に、私の後ろには、左右両方に非常出口がございます。もちろん火災の場合にご使用いただきますが、せき込んでいる方を発見した場合も一時利用が可能です。

***

 

(所感)

文中に下線を引いた場所、一つ目の「ターミナル(terminal)」が医療上の終末期を指すことはきっとご存じでしたよね。

では二つ目の「パーガートリー・ホテル(Hotel Purgatory」はいかがですか?私はPurgatoryの意味を知らなかったので辞書を引いてみると「煉獄(れんごく)」とありました。転じて、"extremely unpleasant experience which causes suffering"だそうです。確かに、こんなホテル滞在はキツそう。。。!

 

それではまた。
The Economistの定期購読はこちら↓

英国The Economist(エコノミスト) 43%OFF | The Economist Newspaper Limited | Fujisan.co.jpの雑誌・定期購読