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Weekly edition:表紙づくりのウラ話(2020年5月2日号)

The Economistの定期購読者限定で、毎週初めに、最新号の表紙デザインをどう決めたか?という編集部ウラ話がメールで送られてきます。このストーリーを読むと、その週のThe Economistの主張が見事に表紙デザインに反映されていることが分かります。毎週、読み応えのある大量の記事を発信するだけでなく、主張を端的に反映したイラストも見どころのThe Economist☆本当に、大したものだと思います。

 

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今回はこの表紙デザインの編集部ウラ話!

(原題)
Cover Story: How we chose this week’s image

(和訳)

週によっては、表紙に何を持ってくるべきかは最初から分かっています。それでもたいていは、複数の案を考えておき、実際のニュースの展開や手元に届いた原稿を見て、最もしっくりくるものを選んでいきます。今週はまさにそんな週でした。


編集会議では2つの案が上がりました。その一つが、学校再開を急ぐべきだという議論です。休校の影響は、利点があまり見えないのに対し、子どもたちや保護者にとってのコストは明白かつ甚大でした。取るべき行動が明らかなとき、常に強いメッセージが生まれます。デザイナーはすぐにシンプルかつ強い視覚的インパクトのあるイラストを描き上げ、効果的な表紙が作成されました。 f:id:Simple333:20200506135857p:plain

しかし、時間が経つにつれ、多くの国や地域はすでに学校再開に動いていることがわかってきました。そこで水曜日の昼までには、編集部は2つ目の案で表紙の検討を進めていました。私たちが「90%経済」と呼ぶことにした「ロックダウン後の日常」を連想させるような表紙は何か?経済が90%も回復すれば良いではないか、という発想ではなく、第二次大戦後最大の景気後退になるかもしれないという含みを持たせることがカギでした。

これは難題でした。初期のアイデアでは、経済の歯車にウイルスがしっかり組み込まれている様子が描かれています。別の案では、経済活動のレベルをメーターで示し、その中心にウイルスが居座っています。

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編集部は全員一致で「90%経済」というフレーズに賛成でした。でもこれらのデザイン案は、このフレーズに込められたメッセージを十分反映していませんでした。そこで、もっと活字に重きを置いた表紙はどうかという議論になり、「90」と「%」の中にウイルスを忍ばせてみました。

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左上は強い印象を与えるものでしたが、どこかで見たようなデザインでもありました。というのはこの4ヶ月間、The Economistをはじめ、ウイルスと地球を組み合わせたデザインはすでにいろいろなところで登場していたからです。右上は新鮮さこそありましたが、90%にとどまることがどれほど打撃を与えるものかを伝えていませんでした。


そこでデザイナーは、90%経済では日常生活の大事な部分が失われることを何とか表そうと模索を続けました。そして、表紙の10%をハサミで切り取ること、そして、表紙全体を10%縮小すること、の2つのアイデアをひねり出しました。

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しかし、どちらのデザインも90%で十分ではないか、という印象を与えました。10%についてはクーポンのように単なるオプションであるか、または元々の日常と変わらないがサイズがやや小さくなっただけだ、と読み取ることができたからです。何かがおかしい、というメッセージの伝達は、サブタイトルの「90%がもたらす痛み(It's going to hurt)」に依存していました。デザインそのものではこのメッセージを伝えきれていなかったのです。


最終的に編集部が出した答えは、表紙を破り、書かれている文字の一部が読めなくなることで、読者の違和感を誘うことでした。

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その結果、サブタイトルを削除して全体を整理することができました。90%であることの痛みがデザインそのものから伝わってくるようになったからです。そして、さらに多くの議論を重ね、反対論も残る中で、イラストに紙の破れという質感を加えることになりました。


こうして表紙の10%を失ったことで、この号のおすすめ記事が記された右上の見出しは、エマニュエル・マクロン首相に関する記事のタイトルの肝心な部分が、ちょうどうまい具合に切り取られる形になりました。

***

 

最近は、この編集部ウラ話が楽しみで、楽しみで。これからもちょくちょく、このブログで共有できたらいいなと思います!

 

それではまた。
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