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英エコノミスト(The Economist)の最新記事を日本語で紹介しつつ、日々の気づきを徒然につづります

エグゼクティブ・オフィス廃止の功罪(2021年5月1日)

f:id:Simple333:20210503070827j:plain2021年5月1日号のビジネスセクションから私的要約をお届けします。

英語原文を聞きたい方は、下の音声ファイルをクリックしてください!

(めっちゃイギリス英語ですよ~笑)

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Bartleby
Abolishing executive offices
The costs of office-less executives outweigh the benefits

 

www.youtube.com

 

これまで企業のオフィスといえば、上層階に経営陣のフロアがあり、CEOの角部屋オフィスの大きな窓からは最高の景色が広がります。上階へ呼ばれた部下は一瞬でも緊張を覚えます。

 

最近の経営者の中にはこのスタイルを嫌う人もいます。例えば、Netflixの創業者リード・ヘイスティングスは大部屋で仕事をしています。最近ではもっと伝統的な企業も新たなスタイルを取り入れ始めました。大手銀行HSBCのロンドン拠点であるカナリーワーフタワーの42階はかつてエグゼクティブフロアでしたが、このフロアは今後、会議室フロアに変更され、経営幹部も一般社員同様「ホットデスク(自由席)」で仕事をすることになります。

 

このような転換には一理あります。一般社員が大部屋に詰め込まれる一方で幹部社員がパノラマビューの快適なオフィスにしがみついていては、従業員のやる気の低下につながります。それにリーダーが近くに座っていれば、プロジェクトの進捗状況やスタッフの気持ちをより正確に把握できます。理論的には、リーダーがすぐそばにいれば、スタッフは問題を相談しやすくなります。

 

しかし、常に上司がいる場では、かえって士気が下がることも考えられます。職場の楽しみのひとつは、同僚とのちょっとした会話です。その中には、上司の悪口もあるでしょう。上司がいると、話の内容やトーンが制限されます。常に真面目な顔をしていないと、自分の仕事の質が疑われるかもしれませんから。

 

それに、エグゼクティブが本当に毎朝、座る場所を探すのかも気になるところです。例えば初日にCFOが自分の机を選ぶと、翌日から控えめな部下たちはその机には近づかないでしょう。逆に、特定の上司と密に仕事をしたい人は、常に上司の近くのデスクを選ぶでしょう。つまり自由席の「場所取り」問題が発生する可能性があります。

 

もちろん、エグゼクティブが長い間、大部屋にいないこともあります。将来の事業計画や人事のミーティングなど機密性の高い会議は非公開で行われなければなりません。つまり、HSBCがエグゼクティブフロアを改造した会議室の大半は、結局、管理職に独占されてしまう可能性があるのです。

 

大部屋に上司がいると、別の問題も引き起こします。経験がある人なら誰しもわかるとおり、大部屋での仕事は他人の話し声が気になって集中できないことがあります。その場合、ヘッドフォンをして雑音をシャットアウトしたりします(これは「邪魔するな」というアピールでもあります)。しかし、管理職がこれをやると、部下とのコミュニケーションを拒否しているように見える危険性があります。

 

オープン型のオフィスに関する複数の研究が、このタイプのオフィスは期待される協業効果を生まないことを明らかにしています。例えば大部屋デザインに変更した企業では、対面でのコミュニケーションが70%減少したという結果が出ています。多くの人は、常時監視されていることを嫌います。物理的な壁がないと、人々は見えない壁を作り、表情や素っ気ない対応で自分の世界に入ろうとします。

 

それに多くの場合、必要なのは自分のチームとのコミュニケーションです。ですから、ホットデスクを採用して異なるチーム間のコラボレーションを生み出そうとしても、なかなかうまくいきません。すぐ隣に座る別のチームの人と話をせず、別のところにいる自分のチームメンバーにメールでコミュニケーションをするような状況が生まれるだけでしょう。

 

現実的に、企業がオープン型のオフィスを採用する主なメリットは、固定席の場合よりも多くの従業員をカウントできることによるコスト削減です。一部の企業は在宅勤務も積極的に認めています。HSBCは最近、主にコールセンターで働く1,200人以上のスタッフに対し、永続的に在宅勤務を認めると発表しました。実際、HSBCのエグゼクティブフロアの撤廃は、本社コストの40%削減を目的する計画の一環です。同行トップのノエル・クインがフィナンシャル・タイムズ紙に語ったように、経営幹部は出張が多く、オフィスでの仕事は全体の半分程度だったのです。結局、物事の展開を把握するには、お金の動きを追うのが一番手っ取り早いようです。

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皆さんの会社のオフィス事情はどうでしょう?上記のエコノミスト誌の指摘、あるあるじゃないでしょうか?!

コロナ禍がもたらした良い面の一つが、働き方の改革がいやおうなしに進んでいることです。The Economistもビジネスセクションで、働き方の問題を多く取り上げています。このブログでも以下のような関連記事がありますので、お時間があればのぞいてみてくださいね。(サイドバーのカテゴリー「働き方」に一覧があります☆)

simple333.hatenablog.com

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