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米民主党副大統領候補にカマラ・ハリス氏(2020年8月15日)

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Kamala Harris
What Kamala says about Joe
Joe Biden’s choice of running-mate reflects well on him

カマラ・ハリスはバイデンにとって順当な選択

youtu.be

 

<全文和訳>

 

民主党ジョー・バイデン大統領候補のこれまでの戦略は、可能な限り余計な手出しをしないことである。ニュースの話題がトランプ大統領新型コロナウイルス感染症による死亡者と経済への影響で占められるほど、バイデン氏の選挙運動は有利になる。そしてこの戦略は今のところうまくいっている。世論調査の平均値では、バイデン氏のリードは9ポイントにアップしている。民主党は大統領選に勝利し、下院で過半数を維持するだけでなく、今年初めには見込みのなかった上院での勝利も収める可能性がある。この3つの選挙での民主党勝利は、米国を変える力になる。

しかし、米国はどう変わるのか?バイデン氏のステルス選挙戦は、11月の大統領選に勝つためのアプローチとしては機能してきたが、バイデン氏がどのような大統領になるかはあまり明らかにしてこなかった。しかし、カマラ・ハリス上院議員を副大統領候補に選んだことは、今までの路線とは一線を画すものである。副大統領候補の選択はバイデン氏が迫られた最初の大きな決断であり、ホワイトハウスでどのような意思決定がなされるか、そして、将来のバイデン政権のイデオロギー的な傾向を示唆するからである。

バイデン氏が今回、自らも8年間経験した副大統領職にハリス氏を選んだことは順当だ。バイデン氏は民主党の予備選中に自らを最も激しく攻撃した人物を恨みなしに選んだ。ハリス氏は米国副大統領候補として初のアフリカ系そしてアジア系(ハリス氏の両親はジャマイカとインドの出身)女性であるという型破りなバックグラウンドを持つ。一方で典型的な出世コースを通って高官に上り詰めた人物であり、サンフランシスコ地方検事、カリフォルニア州司法長官を経て現在は上院議員を務めている。まっとうな統治の復活を公約に掲げているバイデン氏にとって、ハリス氏の経歴は強みになる。

今回の選択は、将来のバイデン政権について何を物語るのか?バイデン氏と同様、ハリス氏は民主党の中道派である。つまり、気候変動、医療、企業と国家の関係について、革命ではなく段階的な変化による前進を追求することを意味する。

リバタリアン進歩主義的な民主党員の両方にとって、ハリス氏の最大の弱点は検事時代の経歴である。カリフォルニア州は刑務所の過密化と保護観察制度の機能不全に悩まされており、ハリス氏はどちらの改善も達成しなかった。ハリス氏は大麻の合法化に反対し、非暴力犯罪を積極的に起訴した。しかし、今回の選挙戦がトランプ氏が望むような「法と秩序」を争点とするものになれば、この経歴はおそらく有利に働くだろう。米国の大都市で殺人事件が急増している年に犯罪に甘いというイメージは致命的だが、ハリス氏が今回そういう印象を持たれることは考えにくい。

ハリス氏が特にイデオロギー的ではないことも、11月の大統領選にはプラスに働く可能性がある。トランプ陣営は急進的な左派を期待していたが、ハリス氏の登場で、トランプ大統領は最初の攻撃の軸を「インチキなカマラ」とせざるを得なかった。トランプ氏の侮辱によく見られるように、侮辱には真実が含まれている。民主党予備選中、ハリス氏は、世論が民間の健康保険の廃止に傾いていると読んでこれを支持する姿勢を見せた。その後、その論調がトランプ氏の再選に有利だとわかるとこれを撤回し、実行不可能な折衷案の支持に回った。このことはハリス氏が固定的な考えを持っていないことを示唆しており、また、ワシントンの取引においては有用に働くこともある柔軟性の持ち主であることを示唆している。

要するに、ハリス氏の路線は、バイデン氏とよく似ているということだ。副大統領候補は、大統領候補の特定の弱点をカバーすることが目的で選ばれることもある。マイク・ペンス副大統領の福音主義的な信心とトランプ大統領ヒュー・ヘフナー的性向の組み合わせはその一例だ。ハリス氏の場合、どちらかというと増幅器のような存在といえる。バイデン氏と同様、ハリス氏も民主党とともに歩んできたが、例えば刑事司法の分野で党の多数派から大きく離れることはなかった。また、ハリス氏は高官や議員として十分な経験を積み、立法者としての有能さも発揮している。バイデン/ハリス陣営は世間の大きな注目を浴びるような存在ではないかもしれないが、トランプ現政権とは対照をなす資質を有しているといえるだろう。

この点は、ハリス氏が大統領職を代行する、あるいは自身が将来大統領選で勝利する可能性を考えると重要なことである。米国人男性の平均寿命は76歳であるが、バイデン氏は77歳である。バイデン氏が11月に勝利した場合、任期中にハリス氏がバイデン大統領の代行を求められる可能性がある。バイデン氏が敗北したとしても、ハリス氏は次期大統領選挙の最有力候補になるだろう。現在の米国における人種差別に関する社会不安を考えると、ハリス氏は多くの点で、安全で堅実な副大統領の選択肢だと思われる。そしてこれは進歩の兆しである。

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